イケメン思想家、女子大生の最新ファッションに「伝統的マトリョーシカ」を要求する。

ファッション

こんにちは、東京在住、18歳のヘタレ女子大生、Masha(マーシャ)です。

初めてこの記事を読んでくださる方のために、まず我が家の、というか私の人生最大の「バグ」について3秒でおさらいさせてください。

わたしの駒込の狭いワンルームには、現在、同居人がいます。 ……いえ、「人」ではありません。「100年前のロシア革命家の亡霊」です。

ふとしたきっかけで居座るようになった彼は、栗毛のウェーブに茶色のクリクリした瞳を持つ、悔しいくらいに超絶イケメンな亡霊。ただし、中身はガチガチの共産主義思想家。通称「同志」

前回の記事では、彼に引きずられて田端のミリタリーショップに行き、ゴリゴリのソ連軍ポーチと水筒を貢がされた(買わされた)お話をしました。

おおかたの予想通り、わたしのクローゼットの「赤化(ミリタリー化)」は順調に進んでいるわけですが、実は私、武骨な軍装品だけじゃなくて、こういう「可愛いロシア」もちゃんと持っているんです。

椎名町で見つけた、ため息ものの「可愛いロシア」

じゃん。

ロシアの伝統的なウールのショール、『プラトーク』です。

これはネットで見つけた……わけではなく、西武池袋線の隠れた名スポット・椎名町にあるロシア雑貨専門店『マリンカ』さんで見つけて一目惚れし、赤と青の2色を大人買いしてしまったもの。

ロシア雑貨店マリンカ / TOPページ

(マリンカさん、可愛いマトリョーシカやロシア絵本、伝統工芸品が所狭しと並んでいて、お洋服大好きな女子大生にとっては天国のような空間でした……!)

どうですかこれ、めちゃくちゃ綺麗じゃないですか? 細密画みたいなペイズリー柄と、浮き立つような大輪のバラ。そしてこの裾の、シャラシャラとした長くて豪華なシルクのフリンジ(房)。 ウール100%で手触りも最高。駒込の狭い部屋が一気にヨーロッパの寄木細工の部屋になったかのような、大人の気品が漂います。

そもそも「プラトーク」とは?(そして同志、突然の語り)

ロシア語で「プラトーク(Платок)」とは、四角いショールやスカーフのこと。古くからロシアの女性たちが頭や肩に巻いて愛用してきた、まさに伝統衣装の代名詞です。

その辺をちょっと詳しくブログに書こうとしたら、我が家のソファの主が、珍しくお説教モードを忘れて、浮遊しながら食い入るように写真を見つめてきました。

「……おお、それはただのプラトークではない。『パヴロヴォポサド(パヴロフスキー・ポサド)』のショールだな。懐かしいな……。私の故郷の村でも、母や姉たちが冬になると誇らしげに頭に巻いていた」

「えっ、名前知ってるの? すごいじゃん同志」

「当然だ。モスクワ近郊のパヴロフスキー・ポサド市で作られるこのショールは、我々の国が世界に誇る芸術。
その歴史は18世紀末、1795年頃にまで遡る。もともとは小さな絹織物の工場から始まったのだが、19世紀中頃に独自のウール印刷の技術を確立して以来、ロシアのテキスタイル文化の頂点に君臨し続けているのだ」

急に専門チャンネル並みの熱量で背景を解説し始める亡霊。彼の一人語りは止まりません。

「この緻密な幾何学模様と、瑞々しいバラのテキスタイルを見てみろ。かつては熟練の職人たちが、一つ一つ手作業で複雑な木版を何十回も捺して、この大輪の花々を布の上に咲かせていたのだよ。
革命後のソビエト時代にも、この伝統と技術は国営工場として大切に守られ、労働者階級の女性たちの生活を彩ってきた。
ロシアの厳しい冬を生きる人々にとって、これは単なる防寒具ではない。凍てつく白銀の世界の中で、せめて『咲き誇る花々を身に纏う』という、生活の不条理に対する最高の美の抵抗なのだよ、Masha」

……。 熱弁がすごすぎて圧倒されましたが、100年前の彼が「本物」と認めるだけあって、このパヴロヴォポサド社のプラトークの放つオーラは本当に特別です。

「でしょ? 伝統的な美しさがあって、すごくお気に入りなの。現代の日本の女子大生が、こうやって肩にサラッと羽織ったり、首元に巻いたりしても、クラシカルで最高にオシャレなんだから」

というわけで、まずは青い方を首元にサラリと巻いて、大学へ行ってみた時の写真がこちら。

どうですか! 某大学のクラシカルな時計塔の雰囲気にもマッチして、絶妙にレトロで上品な女子大生って感じじゃないですか!?(自画自賛)

フリンジのボリューム感も可愛くて、友達からも「それどこの? めっちゃ綺麗!」って大好評。ドヤ顔でキャンパスを歩いていたわけです。

が、家に帰って鏡の前でポーズを取る私を見て、ソファの上の同志は、フム、と顎に手を当てて、不満げに私に近づいてきました(亡霊なので足音はしません)。

「Masha。プラトークのその使い方は、決定的に『本質』を損なっている」
「……はい? 本質って何よ。ファッションだよ?」
「違う。プラトークとは、こうだ。そしてこれ(サングラス)をかけろ。紫外線は大敵だからな」
「え、何その急な現代的ケア」

言うが早いか、同志は私の手から今度は赤いプラトークを(霊力で)ひったくると、私の頭の上にふわりと被せました。そして、顎の下できゅっと結び目を(霊力で)作ったのです。ついでに引き出しから私のサングラスを浮かせて装着。

「……よし。これでこそ、大地の恵みを支える、正しきロシアの農村の娘(コルホーズの星)だ。実に見事なコンプレクト(完璧な仕上がり)だな」

鏡を見る。

……そこにいたのは、完全に『マトリョーシカ(怪しいバカンス仕様)』でした。

「いや、ただの不審な生首マトリョーシカじゃん!!! なんでプラトークにこのデカめのサングラス合わせたのよ!!」
「何を言う。頭を厳寒(と紫外線)から守り、労働に勤しむ女性の姿こそ至高の美。さあMasha、そのままスプーンを持って、ボルシチの鍋をかき混ぜるのだ」 
「形から入るんじゃないわよ!!」

現代の女子大生の正しき(?)使い方

「そこまで言うなら、お前がその格好で外を歩いてみろ。プロレタリアートの底力を見せてみろ」と同志に煽られ、謎の対抗心を燃やしてしまったヘタレ女子大生の私。

気がついたら、本当にこの「マトリョーシカ・スタイル」のまま、外の雑踏へ連れ出されていました。

それがこちらです。

見てください、この一切の感情を失った私の虚無の表情を。

どんよりとした曇り空の下、都会のビル群と居酒屋の看板をバックに、真っ赤なフリンジをなびかせるサングラスのマトリョーシカ。完全に時空がバグっています。すれ違う歩行者たちの視線が、痛い。痛すぎる

「おいMasha、素晴らしいぞ。まるでモスクワの赤の広場で決起を待つ若き活動家のようだ」と、私の隣で嬉しそうに浮遊しているイケメン亡霊(※周りからは見えない)の絶賛の声だけが、私の心を虚しく癒やしてくれました。

結局、お散歩のあとは首元に普通にボリュームを持たせて巻くことで落ち着きましたが、私がこれを巻くたびに、同志はソファから「今日は農場(コルホーズ)へ行くのか?」と嬉しそうに聞いてきます。
行き先は大学の図書館です。

でも、クーラーで冷えがちな大学の講義室で、このプラトークを羽織っていると本当に温かいし、やっぱり買って大正解でした。

(ちなみに青い方は、同志が『我が故郷の冬の空の色だ……』と言って大変気に入ったため、現在は我が家のソファの、あのソ連軍水筒の真後ろに、完璧な背景タペストリーとして飾られています。部屋のインテリアのクセが強すぎるので、誰かセンスの良い除霊師さんを本気で募集しています。

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