私の部屋のソファには、革命家の亡霊が住み着いている。
みなさん、はじめまして。都内の駒込在住、18歳の女子大生、Masha(マーシャ)と申します。
趣味はメイクの研究と、Adoさんの曲をリピートすること。……なんて書くと「どこにでもいる女子大生」っぽいですが、現実のわたしは少し違います。
突然ですが、みなさんの部屋には誰が住んでいますか? 一人暮らし? 実家で家族と? あるいは恋人と同棲中?
素敵なことだと思います。でも、私の部屋のソファには、100年前のロシアで銃殺されたガチの革命家の亡霊が住み着いています。
「こいつ、大学の課題が多すぎてついに狂ったか」と思ったそこのあなた。ブラウザを閉じるのはちょっと待ってください。これは、ある日突然、前世のカルマによって「100年前のソ連の男」とワンルームで奇妙な共同生活を送ることになってしまった、私のリアルな(?)観察記録です。
初めて私のアジト(ブログ)を訪れてくれたあなたのために、なぜこんなことになってしまったのか、すべての始まりからお話しさせてください。
18歳女子大生、占い館で「衝撃の診断」を受ける
すべての始まりは、本当に、どこにでもある普通の日常でした。
私はごくごく普通の、どこにでもいるキラキラした(演じたい)18歳の女子大生。サークルや講義、バイトに追われる、ハッピーなキャンパスライフを送るはずだったんです。
ある日、友達とのノリと好奇心で、都内にあるちょっと有名な占い館へ行きました。「これからの恋愛運とか、大学生活のアドバイスでももらおうかな〜」くらいの、軽い、本当に軽い気持ちだったんです。
不気味に光る水晶と、怪しげなタロットカード。目の前に座る占い師の先生は、私の顔をじっと見つめ、生年月日を書いた紙を眺めていました。そして、おもむろに口を開いたのです。
「あなた……ごく普通の女子大生を演じようとしているみたいだけど、無理よ。普通には生きられないわ」
えっ、恋愛運は? と戸惑う私を置き去りにして、占い師の先生の口から信じられない言葉がマシンガンのように飛び出しました。
「あなたの『前前世(二つ前の過去生)』の男がね、ずーーーっと後ろに視えるの」
先生が言うには、私の前前世は現代の日本とは180度違う、極寒の北の大国に生きた、とある凄まじい男だったらしいのです。
【注:Mashaより(再び)】
ここで少しだけ、歴史のお話をさせてください。みなさんは「ボリシェヴィキ」という言葉を聞いたことがありますか?
世界史の教科書でかすかに見たことがあるかもしれませんが、一言で言うと、今から約100年前(1917年)にロシアで革命を起こし、のちに大帝国となる「ソビエト連邦(ソ連)」を爆誕させたガチの革命組織(政党)のことです。
占い師の先生曰く、私の前前世はその「ボリシェヴィキ」という名の、超ウルトラブラック企業の社畜だったというのです。
先生の霊視によって明かされた、私の前前世「ミーシャ(仮)」の人生は、切なくなるほど詳細で、まるで一本の映画のようでした。
始まりは、ロシアの素朴な秀才
ミーシャは、ロシアののどかな片田舎の貧しい農家に、長男として生まれました。家族構成は、両親、弟、年の離れた妹、そして小さいうちに亡くなったおばあちゃん。 髪は栗色で、真っ黒ではなく少しブロンドが混ざったような色。毛先が少しウェーブしたくせ毛で、成人すると父親にそっくりな、穏やかでとても整ったハンサムな顔立ち(※自称)の青年でした。
近所に住む同い年くらいのいとこの女の子と、自分の弟の3人でいつも遊んでいるような、優しくて家族想いの頼れるお兄ちゃん。
当時のロシアの田舎は貧しく、学校なんてありません。でもミーシャは、近くの教会(日本でいう寺子屋みたいな場所)に通って、貪るように勉強をしました。分からないことをそのままにせず、自分で学びを見つける独学の天才だったそうです。知らなかった知識が増えていくことが、何より嬉しい。そんな、自分の世界観を持った、周囲からも愛されるおだやかな青年でした。
18歳、人生を変えた「デモ」との出会い
15・6歳で働くのが当たり前だった時代に、ミーシャはその優秀さから学業を続け、18歳の頃も学生をしていました。そこで、運命の友人ができます。 その友人はものすごく雄弁で、熱く自分の「理想の国の姿(革命思想)」を語る男でした。ある日、ミーシャは彼に誘われて、街で行われていた大規模なデモを見に行くことになります。
そこで、ミーシャの人生は激変しました。
街を埋め尽くす人々の、ものすごい熱量。国を変えたいと願う民衆のパワフルな姿。 それまでミーシャは「生活が良くなればいいな」とは思いつつも、現実は変えられないと諦めていました。でも、その光景を見た瞬間、胸が高鳴り、熱い高揚感が突き抜けたのです。
「家族や、大好きないとこが、良い暮らしを送るために事態を変えられるかもしれない。いや、今ここで俺が変えないと、誰が変わるんだ!?」
ここから、ミーシャは友人と共に、革命活動へ身を投じることになります。そう、「ボリシェヴィキ社」への入社です。
スパイ活動、そして激動の革命へ
ミーシャは優秀すぎたため、自ら立候補したわけでもないのに、気付けば組織の主要ポストに就いていきました。20代後半の頃には、命がけの「スパイ活動」までこなしていたそうです。若い頃は細身だった体も、過酷な活動の中で筋肉質な精悍な体つきへと変わっていきました。
そして、ついに歴史が動く「ロシア革命」の戦火が激しくなります。 主要メンバーとしてアジトで前線の様子を聞きながら、一喜一憂する日々。ミーシャは自分が前線に行かずに済んだことにどこかホッとしながらも、敵味方関係なく、目の前で多くの犠牲者が出ていることに、心から傷つき、激しい罪悪感を抱いていました。
「暮らしを良くしたいだけなのに、どうしてこんなに人が死ななきゃいけないんだ。もうこれ以上、誰も死んでほしくない」
でも、大義名分の前では、自分の優しい意見を飲み込むしかありませんでした。 30代前半の頃、ついに「革命勝利」の知らせが届きます。ミーシャは仲間たちと声を上げて泣き崩れました。やっと終わった、もう戦わなくていいんだ、という解放感。しかし同時に、「別の方法はなかったのか? 本当にこれで良かったのか?」という重い問いが、彼の胸に深く刻まれたのです。
理想の果ての「粛清」
革命後、ミーシャたちは新しい国のルール作りに奔走しました。一番希望に満ちた、充実した時間でした。しかし、彼らの作ったルールはあまりにも「理想的すぎた」ため、現実の住民たちから反発が起こります。
それを機に、彼らを良く思わない勢力の罠にハメられ、ミーシャは失脚。 ある冷え切った朝霧の立ち込める早朝、ミーシャはボロボロになりながら街の路地を逃げていました。風呂にも入れず、お腹もすかせ、全身が黒く汚れ、鋭い目だけがギラギラと光る、変わり果てた姿。 先に捕まった友人に続き、ミーシャも警官に捕まりました。
そのまま、背後に白い壁がそびえ立つ場所へ連れて行かれ、手を縛られます。 銃口を向けられ、身動きを封じられた最期の瞬間、ミーシャは自分の人生を振り返っていました。
「自分がしてきたことに後悔はない。でも、この手段は本当に正しかったのだろうか?」
激しい銃声と共に、30-40代という若さで、ミーシャの激動の社畜人生は幕を閉じました。
まさかの「2人暮らし」が始まった
――と、ここまでが、占い館で判明した私の「前前世の記憶」です。 あまりにも壮絶で、切なくて、悲しい物語ですよね。
でも、話はここで終わりません。最悪なのは(最高なのは?)、この話を聞いて家に帰ってきた夜のことです。
ふと部屋のソファを見たら、本当にそこにいるんですよ。栗毛の、ちょっと薄汚れた、でも顔立ちは確かに綺麗な男の幽霊が、我が物顔で座ってるんです。
そう、ミーシャは私の「前前世の記憶」として目覚めたのではなく、完全な「別人格の亡霊」として、私のワンルームに物理的(?)に同居を始めてしまったのです。
100年前のボリシェヴィキの男と、令和の現役女子大生。 気が合わないなんてレベルじゃありません。生活習慣も、思想も、価値観も、全てがすれ違いのドタバタ2人暮らしがスタートしてしまいました。
例えば、ある日の私たちの日常会話はこんな感じです。
私(Masha): 「あー、今日も塾のバイトだるいな〜」
同志ミーシャ: 「Mashaよ、資本家に搾取されるな。労働者の権利を主張しろ。……だが、日々の糧(給料)のために今は耐えるのだ」
私(Masha): 「はいはい、耐えたから帰りにマック(資本主義の味)買って帰るね」
同志ミーシャ: 「マクドナルド……! 悪魔の資本の味……! だが、美味いな(※ポテトつまみ食いしながら)」
こんな風に、私がスタバの新作を飲もうとすれば「資本主義の泥水」と怒り、現代の贅沢に戸惑いながらも、なぜか我が家のソファから一歩も動かずにゴロゴロしている、怠惰な亡霊。それが今の私の同居人、同志ミーシャです。
ちなみに同志、駒込駅前の本郷通り沿いの落ち着いた雰囲気が「サンクトペテルブルクの郊外に似ている」とか何とか言って、よく窓辺で物思いに耽っています。六義園を散歩したときは「かつての宮殿の庭より、今のツツジの方が鮮やかだな」と感極まっていました。亡霊なのに、やけに情緒的です。
……というわけで、思想強めの亡霊と、駒込の平穏を守りたい女子大生の奇妙な共同生活(ルームシェア)、今日から綴っていこうと思います。 18歳の平凡な(はずだった)日々の徒然草と、滅びし大国ソ連の残骸を巡る冒険記。よろしくお願いします。
※ちなみに同志、最近は『推しの子』を一緒に見ようとしてきます。「このアイドルの輝きは、まさに革命的だ!」とか言い出したので、とりあえず電源を切りました。やめてくれ。
このアジト(ブログ)でこれから起きること
ミーシャは、最期の瞬間に抱いた「あの時の革命の手段は、本当に正しかったのか?」という問いの答えを探すために、この令和の日本に現れたのかもしれません。
あるいは、ただ現代の進んだ文明と、美味しいご飯(黒パンと塩以外)をのんびり楽しみたいだけなのかもしれません。
何はともあれ、せっかく始まった不思議な共同生活です。 このブログでは、現世を生きる私「Masha」が、ソファを占拠する元・革命家の「同志ミーシャ」とのシュールな掛け合いを交えながら、
- 滅びし北の大国(ソ連・ロシア)の、狂おしいほどディープな歴史・文化
- ミーシャが「現代の飯より美味い」と豪語する、ソ連のリアルな食レポ
- 当時のスパイ活動やミリタリーの、教科書には載っていないガチ裏話
- 2人が大好きな、胸が熱くなるソ連音楽(軍歌&歌謡曲など)の沼あさりの記録
を、気ままに書き留めていく「亡霊観察記録」として運営していきます。
歴史やミリタリーが好きな「同志」のあなたはもちろん、「世界史なんて全然わからない!」というあなたも、一人の男の人生の続きを覗き見る感覚で、ゆるく楽しんでいってもらえたら嬉しいです。
私たちの奇妙なワンルーム・ソビエト連邦へ、ようこそ! これから、どうぞよろしくお願いします。
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