スマホが死んで新宿で遭難しかけた私を救った(?)のは、ソ連国防省発注の戦車時計だった話。

ファッション

こんにちは、都内在住18歳のヘタレ女子大生、Masha(マーシャ)です。 突然ですがみなさん、現代社会において「スマホの充電が切れる」というのは、実質的に「文明からの放逐」を意味すると思いませんか?

昨日、私はまさにその恐怖を味わいました。 場所は、世界一の迷宮・新宿駅。 友達との約束に向かう途中、私のスマホは「バッテリー残量1%」の非情な警告のあと、静かにブラックアウトしました。

モバイルバッテリーは、ない。 新宿の地下迷宮で、Googleマップも、LINEも使えない。 完全に詰んだ……と、人混みの真ん中で絶望のどん底に叩き落とされたその時、耳元で「フッ」と鼻で笑う声が聞こえました。

「現代のプロレタリアートは、液晶のガラスに電気が通らなくなっただけで、これほどまでに無力化するのか。情けない」

私の部屋のソファ(と、現在進行形で私の左肩のあたり)に居座る、100年前のロシア革命家の亡霊、通称「同志」です。もちろん周りの人には見えません。

「笑ってないで助けてよ! 駅の出口も、今が何時かもわからないの!」 「慌てるなMasha。お前の左腕を見るのだ。昨日、私が(メルカリで)買わせた、あの『鉄の意志』を」

そう、私の左腕には、女子大生のファッションを完全に無視した、ゴツくて渋すぎるソ連製のヴィンテージ時計が巻かれていたのです。

「このボストーク(コマンダスキー)がある限り、我々に遭難の二文字はない!」

同志はドヤ顔で空中を浮遊しながら、1960年代の冷戦期さながらの熱量で大演説を始めました。

ソ連軍将校の証:ボストーク(コマンダスキー)の栄光の歴史

「Masha、お前が巻いているその時計の故郷は、ロシアのタタールスタン共和国にある『チストポリ時計工場(のちのボストーク社)』だ。 

その始まりは1941年、第二次世界大戦の最中。モスクワに迫るナチス・ドイツの猛攻から逃れるため、ソ連政府が第二モスクワ時計工場の設備を、はるか東方の安全なチストポリ市へと丸ごと疎開させたのが起源なのだよ」

「え、疎開……? ガチの戦時中じゃん」

「そうだ。戦時中は前線の兵士たちのための軍用時計を必死に製造し、勝利に貢献した。そして戦後の1965年、ソ連国防省はボストーク社に、ある特別な時計の開発を公式に要請した。それが、軍の将校(コマンダー)のために作られた、その『コマンダスキー(指揮官用)』なのだ!!」

同志の解説はさらにヒートアップし、人混みの中で私の腕を掴んで(ひんやりします)、文字盤の6時位置を指さしました。

「見ろ、そこに刻まれた聖なるキリル文字を! 『ЗАКАЗ МО СССР(ЗАКАЗ・МО・ソ連)』とあるだろう!」

「うん、新宿のど真ん中で見ると、より一層不穏な文字だね」

「これは【ソ連国防省発注品】という、正真正銘の本物の証だ! 当時、一般のソ連市民が物資不足の商店でどれだけ行列に並ぼうとも、この刻印が入った時計は絶対に手に入らなかった。軍の特権的な購買部(ヴォエントルグ)において、限られた軍人だけが身につけることを許された、信頼と栄光のシンボルなのだ! 

どんな過酷な戦場、泥、衝撃、そしてシベリアの厳寒にも耐える。それが今、スマホのバッテリー切れごときでオロオロしているお前の腕にあるのだぞ!」

現代の新宿で、ソ連軍のサバイバル技術が火を吹く(?)

「歴史はわかったけど、時間がわかっても、自分がどっちを向いてるのか分からないと出口に行けないよ!」

「フハハ、甘いなMasha。その革ベルトの『下部』を見るのだ。そのためにこのベルトを選んだのだからな」

「あ、このおもちゃみたいな、ちっちゃい方位磁針(コンパス)……!」

「おもちゃとは失礼な! アナログの磁針こそ、電磁パルス(EMP)攻撃やGPS衛星の破壊、そしてお前の『充電切れ』に対抗できる唯一の絶対的真理だ。さあ、針の赤い方を北に合わせるのだ。お前が目指す新宿駅の『東口』は、そこから右へ90度曲がった方向だ!」

都会のど真ん中で、ソ連軍支給の時計と、ベルトに埋め込まれたアナログコンパスを頼りに歩き出す女子大生。

「チクタク、チクタク」と、静かな教室なら確実に響き渡るレベルのデカい機械音を腕から響かせ、私は同志の指示通りにコンパスの示す方向へ進みました。

結果。

歌舞伎町の、ちょっと怪しい路地の奥深くに迷い込みました。

「ちょっと同志!? 東口っていうか、なんか治安の悪そうなエリアに来ちゃったんだけど!! コンパス狂ってない!?」
「バカな、磁針は常に地球の磁場を正しく捉えている! ……ハッ、待てMasha。この地下を通っている『都営大江戸線』の強烈な鉄骨と電流の磁気によって、わずかに針が引っ張られている可能性があるな……」
「現代日本の地下鉄ネットワークの複雑さを舐めないで!!」

結局、親切な交番のお巡りさんに道を教えてもらい(お巡りさんは私の腕の戦車時計を3度見していました)、なんとか友達との待ち合わせに遅刻して合流することができました。

スマホの充電が切れても、ボストークがあれば時間はわかります。 ただし、新宿の地下迷宮では、100年前の革命家のナビゲーションとソ連軍のコンパスよりも、「日本の警察官」が一番頼りになるということがよく分かった1日でした。

(友達には「時計、渋すぎてウケる。でもそれ手巻きだから、毎日巻かないと止まるよ」と言われ、毎朝カリカリとリューズを回すのが日課になっています。部屋のインテリアだけでなく、私の腕のクセまで強くなっていくのを誰か止めてください……

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